毎年4月末から5月初め、武蔵寺(ぶぞうじ)の境内に、ひときわ目をひく藤が繁茂します。
武蔵寺縁起によると、同寺の創建者と伝えられる藤原虎麿(ふじわらのとらまろ)が「堂塔の盛衰は、この藤の栄枯にあらん」と誓って植えたことから「長者の藤」といわれています。
4月29日には「筑紫野市祭二日市温泉藤まつり」が開かれ、美しい藤の花を一目見ようと多くの人が武蔵寺を訪れます。
「長者の藤」がある武蔵寺は、『今昔物語集』や『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』にも見える著名な古代寺院です。
境内裏山では11基の経塚が確認されており、その中には大治(だいじ)元(1126)年銘の経筒が含まれていることから、平安時代後期に栄華を誇った寺院であった事がわかります。
同寺に伝わる五幅の「武蔵寺縁起絵図」には、創建者とされる藤原虎麿にまつわる一連の伝説が表されています。武蔵寺は県指定史跡に指定され、境内には数多くの市指定文化財があります。
武蔵寺境内のそばには、「紫藤(しとう)の滝」があります。この滝の名は、「長者の藤」に由来しています。
菅原道真公がこの滝で身を清め、天拝山に登り、無実を訴えたと伝わっています。
滝のそばには、脱いだ衣をかけた「衣掛石(ころもかけのいし)」もあります。